謹んで新年の賀詞を奉りますとともに、皆様の弥栄をお祈り申し上げます。
昨年8月に、全国熊野会会長に就任いたしました。三千社以上の熊野神社が全国に祀られていますが、その代表として現在164社の熊野神社が集い、交流と研鑽を行なっております。本年は更に多くの熊野神社の宮司様や総代様に御入会いただけるよう努めてまいりたいと思います。

さて、今年は熊野権現の象徴である御神木「梛」(なぎ)の御幣をくわえて初日に向かって羽ばたく金色の八咫烏(やたがらす)を描きました。八咫烏は、神武天皇が大和に向かう道中で道に迷われた時に橿原まで導いたという日本建国の瑞鳥で、熊野の神々の使者である証として3本の足を持つと云われています。梛は、熊野詣での人々が熊野速玉大社を参詣した折にこの葉を持ち帰ったという大神様との御縁を結ぶ有名な霊木です。また、「和魂平安」(わこんへいあん)の文字は和やかな調和の心に思いを寄せて書きました。
私達はいつも安らぎを求めて暮らしていますが、その代価として周囲の人を知らないうちに傷つけてしまうことがよくあります。生活環境が自分の思いのままにある時は和やかで平安の心を持ち続けることができますが、逆に思い通りにいかない状態で続くとストレスがたまり、気づかないところで気枯れ(ケガレ)を呼び込んで健康を損ない、過ちまで犯してしまいがちりになります。
つまり、私達は幸せや安心感を求めながらも、逆に福徳から遠ざかってしまいがちな世界で生きているのです。本当の幸せは、物を求めて勝ちとることから生まれるのではなく、自分の信念を頼りにして、たとえどのような環境にあっても世のため人のために尽くし、思いやりの心をもって生きるという生活から得られるものだと思います。
この一年は「和魂平安」を願い、家族、職場、社会においてお互いを大切にする謙虚な心を育てる年にしたいものです。
熊野速玉大社宮司 上野 顯