現在ヲ読ム 平成23年5月1日

「未来につなぐ 日本の祈り」神と人と自然を結ぶ命の縦糸

この度の東北、関東大震災で亡くなられた皆様に、謹んで哀悼の誠を捧げます。被災地のご苦労は如何ばかりかとご案じ申し上げますとともに、一日も早い復興を願い、御神前に熱祷を捧げております。 さて、全国各地で四季折々に特色ある祭りが絶えることなく行われています。当宮でも、神馬、神輿、船に乗って神々がお渡りになる祭りが伝わってきました。

10月の例大祭では、神霊が御船島を巡った後、お旅所の「杉ノ仮宮」に遷されます。これは神倉山に降り立った神々を初めて里に迎えたとき、杉の葉を使って真新しい初めての宮を造り、秋の野山に実る自然の恵みを供えて鎮祀したという故事にならうもので、毎年同じ場所に変わることなくこの仮宮が建てられ、年に一度そこに還ることを再現いたします。

お旅所では、夕闇の中に松明が灯され、何より初めに童女が神楽を奏して神霊を杉ノ仮宮に鎮め、特別の神饌を献じて古代の神事が始まります。先刻までの御船祭の勇壮さとは対照的に、静寂のなか、神子の振る鈴音さえも哀愁をおび、灯りのなかで厳かに幽玄な世界が浮かび上がります。その神気に、参列者は誰一人として口を開くものもなく、大きな感動が込み上げてまいります。

私達は、雄々しき大樹や気高き山など自然万物に宿す聖なるものに、いつの世も神を感じてきました。大自然の中で織りなす営みとともに、人は祈りの原点を求め、自分自身を見つめ直してきたのではないでしょうか。

神と人と自然を結ぶもの、それは「畏む」という変わることのない日本の祈りの姿であり、二千年の歴史を繋いできた「甦りの熊野」の精神もまた、正にここにあると念うのです。

熊野速玉大社宮司 上野 顯


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