謹んで新年の賀詞を奉ります。
扨て、昨年は終戦から80年にあたり、改めて現世安穏、平和の尊さについて思いを強くした一年でした。本年はこの思いをさらに大切にしていきたいと思っております。
速玉大社では毎年沖縄慰霊の日に沖縄を訪れ、琉球八社の参拝と各慰霊塔を巡拝し、沖縄の本土復帰を記念して植えられた梛の木の成育も見守りながら、平和祈願を続けております。何度訪れても、祖国の礎となられた御英霊への慰霊の思いは尽きることはなく、これからも沖縄に心を寄せていきたいと存じます。
一方、世界では今なお戦争や紛争が絶えず犯罪も多発し、私達の未来を危ういものにしています。何故、世界は平和を望みながら反対の方向に進んでしまうのでしょうか。私達は今こそこの問いかけに、真剣に向き合わなければなりません。
宇宙が誕生して百三十八億年、地球の誕生から四十六億年、人類が誕生したのは二十万年前といわれています。この間地球は気の遠くなるような悠久の時間をかけて、幾度も押し寄せる絶滅の危機を乗り越えて今ある地球上の生物に未来を残してくれました。私達の生命も奇跡の営みの中で生まれてきたのです。
このような地球史を経て人類は文明社会の創造を目指して発展してきましたが、それはまた、豊かな暮らしを得るために自然環境を造り変えてきた歴史ともみることができます。これは私達が生きていくために必要なことなのですが、同時に地球温暖化による環境への悪影響を与え、気候変動や災害、また不漁、不作などを引き起こす要因なども作り出してしまいました。
災害という抗うことのできない脅威の前に人間はなす術もありません。しかし戦争や犯罪など、人間の愚かさと欲望が作り出した悲しみや苦しみは、何としても人間の手で無くしていかなければなりません。それは人類を救うためだけでなく、全ての命あるものを慈しむ地球というお母さんへの恩返しでもあるからです。
一神教、多神教の壁を越えて「地球のために」をスローガンにあらゆる宗教が一つの和となり、世界平和への道を照らす光となる日が訪れることを願ってやみません。
ともに祈りましょう、地球のために。
熊野速玉大社宮司 上野 顯


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