私達は、人生の大切な節目を迎えるごとに、氏神さまや周囲から「おかげさま」をいただき、知らないうちにお互いを思いやる心が育まれてきたように思います。また、家族の誕生日などの「家庭の祝日」を祝い合う心は、「家族の絆」という幸せの基本となる穏やかな生活環境を作り上げてきました。
しかし、昨今は善悪に代わって、物事を好き嫌いで判断する自己中心的な考え方が目立つようになり、命の大切さや家族の絆が揺らいでいます。
昨今の暮、ベトナム戦争で枯葉剤の影響を受けて生まれたあのドクちゃんが、無事成人し結婚することになったというニュースが流れました。
「結婚して、もし子供を授かることができたなら、たとえ自分の子供の上にどのようなことが起きても、その子の全てを受け入れ立派に育てます」と話すドクさんの姿に、私は思わず目頭が熱くなりました。若干25才の若夫婦が、まだ見ぬ我が子を想い、守ろうとする見事な親の覚悟を語ったのです。
子供を守るということは、ただガードするだけではなく、きちんとした躾をして立派に育てるという親の自覚と、家族を思いやる絆が必要なのです。社会全体が渇き始め、心の砂漠化が進む中、彼の珠玉の言霊が普く人々の心に干天の慈雨の如く染み渡りますよう、願ってやみません。
熊野速玉大社宮司 上野 顯
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