現在ヲ読ム 平成30年1月1日

「感動できる自分を創る」 | 平成三十年

謹んで新春の賀詞を奉ります。平素格別の信仰をお寄せいただき拝謝申し上げます。今年の絵馬を描き上げて、無邪気に戯れる子犬達を慈しむ親犬を眺めていた時、ふと子供の育て方や愛情は人間より動物の方が深く勝れているのではと感じました。

近年、子供たちを守り育てる親の自覚の欠如した行為が、余りにも目立ってきたからです。このような危うい時代にこそ、豊かな人間性を取り戻すために宗教的な情操の涵養が強く求められていると思います。

キリストの愛、仏の慈悲、神道の和の精神が一つになって、世を良き方向へと導いていくために 宗派を越えて努力すべき時なのです。古人(いにしえびと)の感じた「畏れ」と「感動」、そして人間も自然の一部であることを自覚していた遥けき時代の人々の素朴な意識は、きっと現代人の病んだ心を癒し、甦らせてくれるはずです。

熊野速玉大社は、平成四十年に新宮の謂れとなった初めての神殿を建てて千九百年を迎えます。私達の祖先は一体いつ、何に対して「神」を感じたのか?これは長年自分に問いかけてきた永遠のテーゼで、遠く祖先たちの感動の記憶を辿り、宗教者として私もその原点に少しでも近づきたいとの念いから、神々の原風景を求め続けています。

さて、オーストラリアの世界的旅行ガイドブック ロンリープラネットによるベスト・イン・トラベル2018で、最も魅力的な観光名所の世界第五位に和歌山県紀伊半島が選ばれました。熊野三山、高野山などの伝統文化、自然環境、温泉などが外国から高く評価されているそうです。

熊野速玉大社にも外国の参拝者が連日訪れ、特に欧米諸国の方が急増しています。フランスからカソリックの神父さん達も私に会いに来られ、宗教について語り合ったこともありました。彼らは神道のお祓いや手水、玉串拝礼の意味をよく理解し、 その通りの作法で正式参拝されました。自分の信じる神がいても他国の神々にも手を合わせ、同化できる自分を持っていることはとても素晴らしく、深い感銘を受けました。

熊野は信仰の地です。訪れる人々は単なる観光ではなく、本来の観光、すなわち心の目で輝くものを観て感動する旅を求めているのですから、宗教、人種を越えて心からお迎えすることが大切です。熊野詣は感動に目覚める旅、熊野速玉大社は生きる力をもう一度いただく新しい門出の地として、これからも変わることなく人々をお迎えしてまいります。

全国熊野会会長 熊野速玉大社宮司 上野 顯


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