国宝・古神宝
熊野速玉大社は、室町時代に足利義満公が奉納したと伝えられる調度品を中心に、約千点にのぼる古神宝類を所蔵しており、いずれも国宝に指定されています。
御神像(ごしんぞう)
当社には、千古の古から伝えられてきた神像七躯があり、いずれも桧の一木造著色坐像です。明治期には、結、速玉、家津美御子、国常立像、皇大神、伊邪那美、伊邪那岐、の七躯が国宝に指定され、昭和二十五年には重要文化財に指定されています。その後平成十七年三月に速玉、夫須美、家津美御子、国常立神像の四躯が国宝に再指定されています。
彩絵檜扇(さいえひおうぎ)
檜扇とは檜の薄板に、花鳥風月をあしらい、金銀箔をちらして綴った扇で、主として宮中においての儀式に際し公家の男女が正装して所持したものです。現在国宝指定の檜扇は、熱田神宮に一握、厳島神社に五握、当大社のもと摂社であった阿須賀神社に一握(現在は国有)、当社に十一握が現存するのみです。当大社では、7月14日夜、桧扇を神前に奉り、扇に宿る神霊を拝む扇立祭が行われます。
桐唐草蒔絵手箱(きりからくさまきえてばこ)
蒔絵手箱は化粧具を納める器物で、中世以前に作られ現存しているものは極めて希少です。当大社では、保存状態が良く、内容品の整った蒔絵手箱を十一合所蔵しています。そのうち上図のものを含む三合は、沃懸地蒔絵銀螺(いかけじまきえぎんら)という最高の技法で作られています。
玉佩(ぎょくはい)
速玉大神の御神宝で、南北朝の精巧な彫金技法によって作られた非常に貴重な遺品です。「西宮記」によると、これを身につける位置は、臣下三位以上は右腰、天子は腰の左右に飾るとされています。
組紐(くみひも)
公卿が装束着用の際に、腰紐に使用したもの。南北朝の作で六条が伝えられています。 この組紐の製作には時間がかかり、一本を編むためにおよそ一年をかけたといわれます。古い組紐の遺品はきわめて僅少で、熊野速玉大社に残闕(ざんけつ組紐の組織が失われ芯糸だけのもの)が伝えられています。